Keep Challenging~予測困難な時代にこそ挑戦し続ける~
近年、地政学的な緊張の高まりや経済の不安定化、生成AIやDX、自動運転などの次世代技術の急速な進化、さらには気候変動による異常気象や大規模災害など、世界情勢や社会環境は大きく変化しています。社会やビジネスにおいて将来の予測が困難な時代となり、お客様からのご要望やご期待も従来とは大きく様変わりしています。
千住金属工業グループは、お客様や社会の本質的なニーズを的確に捉え、それに応える価値を提供することで、共に成長していく企業でありたいと考えています。多くのお客様が推進されている、サステナビリティに貢献する新しいテクノロジーに対して寄与できる新製品の開発や、海外拠点における研究開発・製造体制の強化を進めてまいります。これらの取り組みを実現するためには、技術革新など新たに挑戦し、常に進化し続けることが重要であると考えています。
サステナビリティに貢献するSMICグループの事業活動
持続可能な社会の実現に向け、天然資源を原料とする製造会社として、次世代に何を残せるかを真剣に考え、地球的課題であるカーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーなど、環境に配慮した事業活動を推進しています。
カーボンニュートラルへの取り組みとしては、当社の焼結材料製造で従来使用していたアンモニアを原料とする水素発生装置を活用した、水素発電による創エネルギープロジェクトを立ち上げました。こうした化石燃料に依存しないクリーンエネルギーによる自家発電の実証実験については、水素に限らず、さまざまな可能性を模索しながら継続的に推進してまいります。また、錫-ビスマス(Sn-Bi)組成の低温はんだ実装によりCO2排出削減に貢献できるソリューション「MILATERA」も引き続き提供していきます。
サーキュラーエコノミーへの取り組みとしては、従来から推進してきたはんだリサイクルにさらに注力し、SMICグループのリサイクルシステムからのリユース材・リサイクル材に加え、外部からの購入材の使用率も高めることで、新品材だけに頼らない製造体制の構築を進めています。
SMICグループにおける責任ある鉱物調達
CSRの観点から人権侵害などのリスクを伴う鉱物を使用しない「責任ある鉱物調達」について、発端となった3TG(錫、タンタル、タングステン、金)に限定せず、対象鉱物や対象リスクを拡大する動きが世界的に広まっており、安全でリスクのない原材料への要求が年々高まっています。
紛争鉱物が主に欧米で問題視され始めた当時、米国に駐在していた私は、コンゴ民主共和国およびその周辺国における深刻な人権侵害や、武装勢力の資金源となっている実態を伝える報道に間近に接し、“この問題に対して、人として目をつぶるわけにはいかない”と強く感じ、社内に対して早急な対応を働きかけました。その結果、米国ドッド=フランク法1502条成立後すぐの2011年にRBA(Responsible Business Alliance)、2014年にはRMI(Responsible Minerals Initiative)へ加入し、以降はRBAの指針に従い、責任ある鉱物調達に真摯に取り組んでまいりました。
紛争鉱物の対象である錫については、OECD(経済協力開発機構)が定めるデュー・ディリジェンス・ガイダンスに基づく取り組みに加え、錫を主原料とする製造会社として、錫やはんだのリサイクル率を高め、国内調達を増やすことで、紛争鉱物リスクそのものの低減を目指しています。
将来を見据えた人材確保と体制作り
少子高齢化による生産年齢人口の減少への対応や人材育成など、人材に関わる課題は極めて重要なテーマの一つです。
当社は非上場企業ではありますが、主要経済団体の提言などを参考に、雇用に関する待遇改善や制度の整備に取り組んできました。従業員が安心して働ける安定した雇用体制を整えることは、経営者としての重要な責務であると考えています。
人事制度に関しては、若手社員が早い段階で多様な経験を積める仕組みの検討を始めています。こうした経験は社員自身の可能性を広げるとともに、労使双方での適性の把握にもつながると考えています。 一方で、当社に不足している分野については、専門的な知識や経験を持つ人材を積極的に採用し、補完していくことも重要だと認識しています。すべての社員が持てる能力を最大限に発揮し成長していくためには、会社としてしっかりとした基盤を築くことが不可欠です。そのために、ガバナンスの維持・強化にも力を入れています。
高品質のスプリンクラー製品を世界に広げたい
2024年、千住金属工業グループの一員である千住スプリンクラー株式会社は、創立50周年を迎えました。
1963年に国産スプリンクラーヘッドとして初の型式承認を取得して以来、卓越した技術力で常に高品質なスプリンクラー製品を提供し、国内市場においてトップクラスのシェアを維持してきました。1995年には北米市場への進出を果たしましたが、当初は販売が伸び悩み苦戦を強いられました。しかし、製品の高い信頼性と優れたデザイン性が徐々に評価されるようになり、需要の拡大に応えるべく、米国に製造工場を建設する計画を進めています。
また、千住スプリンクラーにとって大きな転機となったのが、近年問題視されている有機フッ素化合物(PFAS)への対応です。工場や大型駐車場などで使用される燃料火災用泡消火薬剤において、毒性のある特定PFASの除外が急務となっていた中、スプリンクラーヘッドなどの設備のみを取り扱っていた千住スプリンクラーとしては大きな挑戦でしたが、千住金属工業と共同でPFASフリー泡消火薬剤の開発に取り組み、2025年よりリリースする運びとなりました。周辺環境に悪影響を及ぼすことなく、大規模火災を防ぐ消火設備の提供は、社会的にも大きな意義があると自負しています。
日本における住宅や小規模施設へのスプリンクラー設置率は、米国などと比べてやや低い現状があります。今後はスプリンクラー市場の積極的な開拓を通じて、火災被害への防災意識の啓発にもつなげていきたいと考えています。
千住金属工業グループは、皆さまのニーズに応え、持続可能な社会の実現に向けた事業活動に真摯に取り組んでまいります。今後とも、変わらぬご指導とご鞭撻を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。