Legacy×Resilience ~ぶれない軸で、しなやかに時代の変化を乗り超える~
2026年、地政学的緊張の高まりを背景にさまざまなリスクが顕在化し、世界経済の先行きは一層不透明さを増しています。特に製造業界においては、調達リスクの低減が喫緊の経営課題となっており、地域依存度の低減や調達先の多元化を目的としたサプライチェーン再編の動きが加速しつつあります。一方で、デジタル分野における技術革新は目覚ましく、生成AIの高度化や自律型AIへの移行によってDXがさらに進展すれば、半導体業界の新たな成長を牽引する原動力になると期待されています。
このようにリスクとチャンスが渾然一体となっている時代において、SMICグループの経営責任者として、正しい方向へ進み続けることの難しさと重要性を改めて感じています。そのためには、時流の変化を常に前提として捉え、「間違わないこと」を目指すのではなく「誤りに気づいたときには速やかに認め、進むべき方向を修正する、そしてその方向転換に対応できる地力を備えた企業であること」が、極めて重要であると考えています。
ステークホルダーの皆様と誠実に向き合い、取り巻く状況の変化をいち早く察知できる信頼関係を築くとともに、その変化に迅速に適応できる強固な基盤と柔軟な組織体制を構築することが、SMICグループの継続的な成長、さらには持続可能な社会の実現への貢献にもつながると確信しています。
グループの総合力を高める組織体制強化
2026年1月、千住金属工業株式会社は、国内グループ会社である千住電子工業株式会社および千住技研株式会社を吸収合併しました。この二つの会社には、設立に私自身が関わっていたという経緯があります。
約30年前、米国駐在時に現地のお客様からのご要望を受け、従来の実装分野に加え、新たに半導体分野へ参入することを本社経営陣に進言したことが、その始まりでした。当時は半導体部品の小型化・高機能化を支える材料としてソルダボールが着目され始めた時期であり、ベンチャー的な位置づけとしてグループ内に両社を設立しました。
現在では半導体市場の拡大と技術の進展に伴い、当社グループにおいても、ソルダボールやマイクロボールに加え、セミコンフラックスやTIM(Thermal Interface Material:熱界面材料)などの製品ラインアップを拡充してきました。半導体関連事業は、今や当社グループの重要な事業の一つへと成長しています。このような事業環境の変化を踏まえ、事業運営のさらなる一体化を図るため、本合併を実施しました。
また、事業体制再編の一環として、千住金属工業における組織体制を従来の事業部制から本部制へ移行しました。事業部制には各事業部門の迅速な意思決定や市場ニーズへの柔軟な対応といった利点がある一方で、事業部門ごとの最適化を優先するあまり、全社として目指すべき方向性への意識の鈍化につながるというリスクもありました。変化の激しい経営環境の中で迅速な方針転換を実現するためには、経営方針を的確かつ速やかに全社へ浸透させ、全従業員が同じ方向を向いて行動できる体制が必要です。その実現に向けて、本部制への移行を決断しました。
今後は国内外のグループ全体が一丸となり、それぞれの力を最大限に発揮しながら持続的な成長を実現できる体制の構築を目指してまいります。
環境責任を果たし、ゼロエミッション社会の実現をめざす
千住金属工業グループは、重金属を原材料とする製造業として、地域社会の環境に配慮した事業活動を行うとともに、次世代へ何を残していくべきかを真摯に考えています。気候変動や資源枯渇といった地球規模の課題への対応は、企業として果たすべき重要な責任であり、環境負荷の低減に向けた取り組みを一層推進していくことが不可欠であると考えています。
このたびその一環として、国際社会共通の目標である2050年カーボンニュートラルの実現に向け、当社グループの温室効果ガス削減目標を見直し、新たな中期計画を策定しました。国内のみならず海外拠点においても温室効果ガス排出量の削減に本格的に取り組み、カーボンニュートラルの実現に向けた活動を加速してまいります。また、太陽光発電をはじめとする従来の再生可能エネルギーの活用を推進するとともに、水素エネルギーや二酸化炭素の回収・活用技術など、新たな技術の導入可能性についても積極的に検討を進めてまいります。
サーキュラーエコノミーへの取り組みとして推進しているはんだリサイクルについては、協力会社である株式会社髙橋合金との連携に加え、リサイクルシステムの内製体制構築によるさらなる強化を計画しています。両社で長年培ってきたリサイクル技術とノウハウを当社の国内主要製造拠点へ展開し、より安定したリサイクル体制の構築を進めてまいります。
信頼を礎に、持続可能なサプライチェーンを創る
はんだ製品にとって最も重要な原材料の一つが錫です。しかし、錫地金の原料となる錫鉱石は海外でのみ採掘されるため、その調達は海外からの輸入に依存しています。そして、あえて率直に言いますと、この錫鉱石の産地の多くは低所得地域にあります。当社では、はんだ事業が本格化した当初から、現地で採掘に従事する方々へいち早くその対価が還元されるよう、当社が一定の負担を負ってでも当時の業界慣行よりも短い期間での支払いに取り組んできました。そこには、当社にとって重要な錫の安定供給を支えてくれる現地の人々に報いたい、という歴代経営者の思いがあったと聞いています。
私自身も複数の採掘現場を訪問した経験があります。現地で働く人々に直接向き合うことで、彼らにとって日々の生活を支えるための収入が何より重要であるという現実を痛感しました。その経験が、「これまで続けられてきた支払期限の短縮は、やはり千住金属工業として継続すべきこと」という思いを一層強くさせ、経営に携わる立場となってから、さらなる改善検討を重ねる原動力となりました。現在では購買先様と当社の双方にとって最適な仕組みを構築できたと自負しております。実はこの後日談として、コロナ禍で海外物資の供給が不安定になる中、錫地金の調達先である製錬会社の皆様から全面的な協力を申し出ていただき、難局を乗りきることができたということがありました。私の中でも、この経験は長年にわたり築いてきた信頼関係の大切さを改めて実感する出来事となりました。
調達に限らず、相手を理解し、より良い関係を築くために何をするべきかを考え、誠実に実行すること。そして、その積み重ねによって得られる信頼こそが、当社のみならずサプライチェーン全体の持続的な成長につながると考えています。 これは私個人の考えというよりも、故佐藤千壽名誉会長、故佐藤一策前会長から受け継いできた「千住金属工業とはこうあるべき」という、いわば「SMICイズム」だと思っています。このSMICイズムを次世代へ継承し、時代の変化とともに進化させていくことが、経営の責任者として重要な責務であると考えています。
今後も千住金属工業グループは、すべてのステークホルダーの皆様から信頼される企業であり続けるとともに、事業活動を通じて持続可能な社会の実現に貢献するため、挑戦を続けてまいります。
当社のマテリアリティ

